ELECTRODE 電極
ELECTRODE
作用電極
ボロンドープダイヤモンド
(Boron—Doped Diamond;BDD)電極
BDD電極は、本来絶縁体であるダイヤモンドの物理的・化学的特性を保ちつつ、
ホウ素をドープすることにより、導電性を付与した炭素系電極材料です。
無機 - 有機電解合成、殺菌処理用電極、高機能な電気化学センサー用材料として研究・実用化されています。
当社のBDD電極は熱フィラメント化学気相成長(HFCVD)法により、
基板上表面に1μm程度のダイヤモンドの多結晶薄膜を合成したものです。

BDD電極表面のSEM画像
BDD電極商品
BDDディスク作用電極(BDD-6355)
BDD回転電極(R-BDD3)
ECSTATSYN-8000
電解用BDD電極(CODE:27089)
BDD物性(ラマンスペクトル)

ラマンスペクトルではアンドープのダイヤに由来するピークは1330cm-1でシャープですが、ホウ素濃度が2%程度と高い場合、ホウ素由来の1220cm-1の広幅のピークの肩に、1300cm-1のピークが少し出てきます。
これはホウ素がしっかり格子置換されている証拠として電気化学的な特性(電極としての性能)は非常に優れてる証拠となります。
BDDの基礎電気化学特性
~ 広い電位窓 ~

電位窓のCV測定
支持電解質:0.5M_硫酸
BDD電極は、従来のグラッシーカーボン(GC)電極とは異なった特徴として、
水溶液系において電位窓(特に酸素過電圧が大きいこと)が挙げられ、
高電位において従来検出が困難であった物質の分析など新しい発現の可能性を
秘めています。
~ 小さいバックグラウンド電流 ~

充電電流のCV測定
支持電解質:0.5M_硫酸
BDD電極表面には化学種の吸着サイトが少ないため、電気二重層容量が非常に小さいことが挙げられます。その大きさは、GC電極の1/5以下であり、
センシングにおけるシグナル/バックグラウンド(S/B)比が向上します。
~ 電極としての耐久性 ~


ダイヤモンド本来のsp3構造により、物理的・化学的に非常に安定しており、不溶性であることが挙げられます。そのため、高電位印加条件でも電極表面の形状変化はなく、長期間に渡り安定した同一特性を維持できます。
GC電極とBDD電極で高電流密度の定電流電解の結果、GC電極は自身の酸化により電極は崩れ落ちた一方、BDD電極は外観変化がありませんでした。
電流:0.5A/cm2
電解液:0.1M_硫酸
電解時間:2h
BDDの電気化学特性(応用)

| ピーク電位差 ΔE (mV) |
|
| GC | 67 |
| BDD (水素終端) | 62 |
| BDD (酸素終端) | 152 |
フェロシアン化カリウムのCV測定
濃度:2mM
支持電解質:0.5M_硫酸ナトリウム
BDD電極は、それ自体優れた機能性電極材料ですが、表面改質や触媒物質の導入により更なる機能性を付加させることができます。表面改質の一つとして水素終端および酸素終端BDD電極があります。合成直後のBDD電極表面は、水素原子が化学吸着した水素終端表面ですが、酸素プラズマまたはアノード分極処理等により酸素終端表面へと改質することができます。
フェロシアン化カリウム溶液でのサイクリックボルタンメトリー測定をGC、水素終端化BDD、酸素終端化BDDで行いました。GCはΔEp=67mV、水素終端化BDD電極はΔEp=62mVと水素終端化BDD電極の方がネルンスト値の59mVに近い値を示しました。一方、酸素終端化BDDはフェロシアン化カリウムは可逆な[Fe(CN)6]4-⇔[Fe(CN)6]3-の負電荷の酸化還元反応であり、電極終端官能基である–OHやC=Oの存在により静電的斥力が働き、酸化還元ピーク電位が広がりΔEp=152mVとなりました。

| ピーク電位差 ΔE (mV) |
|
| BDD (水素終端) | 592 |
| BDD (酸素終端) | 459 |
硫酸鉄のCV測定
濃度:5mM
支持電解質:0.5M_硫酸
また逆に、硫酸鉄は非可逆なFe2+⇔Fe3+の正電荷の酸化還元反応であり、
水素終端化BDD電極のΔEp=592mV、酸素終端化BDD電極のΔEp=459mVとなり、
表面極性に依存した結果となりました。

カフェインのCV測定
濃度:2mM
支持電解質:0.5M_硫酸
酸素過電圧が大きいことを利用し、アルカロイド系のカフェイン難反応性物質の測定を行いました。GC電極は酸素発生電位と重なっていますが、BDD電極は酸素発生せずにカフェインを感度よく定量分析することが可能です。

フェノール類の高速液体クロマグラフィー(HPLC)による電気化学検出法では、GC電極表面上にフェノール類の酸化重合物が付着し、再現性が低下することが知られています。
下記の論文※では酸素終端BDD電極を用い、フェノールの HPLCによる検出方法を報告しています。一般にフェノール濃度が高いほど電極の失活が起こりやすく、高濃度5mMの2,4ジクロロフェノールを用い、FIA分析を100回行ったところ、相対標準偏差(RSD)としてGC電極で39.1%でしたが、BDD電極は2.3%に抑えることができています。
さらにBDD電極において、100回測定後にフロー状態で比較的高い電位(2.64V.SCE)を10分間印加することで、電極活性の再生が容易に行え、電流値が初期値に回復されたとも報告しています。これは高電位によりBDD電極近傍でOHラジカルが発生し、電極表面に付着した重合膜を完全に酸化分解したためと考えられています。
※ C. Terashima, Tata N. Rao, B. V. Sarada, D. A. Tryk, A. Fujishi-ma:Anal. Chem., 74, 895(2002).